2008年4月1日火曜日

母「タカシ。カーちゃんが捕まったら助けるんだよ」

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カゴの荷物は頭上から30センチ以上ウズ高く積み上げられている。この荷物を背負って、一番大変なのは階段を降りるときだ。

Great Mother
体力がない、またはバランス感覚に自信のない「かつぎ屋さん」が、階段を下りるときは、先ず「手さげカゴ」を仲間に持って貰い、その仲間にカゴに縛り付けたヒモを、後ろに引っ張って貰いながら降りる。
「かつぎ屋さん」が階段でケガをする大半は、降りるときだった。

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先に降りた者はホームのベンチにカゴを乗せてから、今度は助けて貰った仲間を、助けてる。
階段を下りることに自信のない「かつぎ屋さん」はたいていの場合、到着駅で一人になると身動きがとれなくなる。従って、最寄り駅に助っ人を呼んでいるようだった。

Great Mother
日暮里駅で、ほぼ全員の「かつぎ屋さん」が階段を登り終えても、母は階段を登ろうとしなかった。いつもの半分ほどしかない荷物のカゴを下ろさずに、周りを見渡しながらジットして動かない。母の表情が何かキゲンが悪そうに見える。私は「自分が原因かとな~」と少し不安になった。

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しかし、母は一円札を5枚を出すと私に渡して「好きなもの買ってきな!」と売店(今のキオスク)を指さした。母のキゲンが悪いのは、自分のせいじゃない事が分かったのと、意外なお小遣いに私は嬉しかった。

Great Mother
当時、我が家では、お小遣いなど滅多にもらえなかった。貰えても、私と姉と妹の三人で5円のお小遣いで買った物を分け合った。

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飴玉の周りにザラメをまぶした、小さな飴玉が3個買えた。甘い物があまりない時代だから、嬉しくて飴を母に見せると、一瞬いつもの母の顔に戻って「食べな」と言うが、すぐに緊張した顔に戻った。母は、頻繁に周りを見渡しながら、時折山手線の方向に視線をやる。なにかを待っているように見える。

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母がその場所に座り込んで15分くらいすると、遠くから笛の声が連発で数回聞こえた。母が「ヤッパリ」と言う。また連発で笛が聞こえる、山手線の方向だが電車は止まっていないから、発車の合図とは違う事は私にも分かった。

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「アッ」母が一瞬小さな声を上げた。「タカシ。こっち」と私の手を引いた。私は、母に引かれる、まま階段の下の空間の角に置いてあるゴミ箱の影に、かがんだ。

Great Mother母の怯える顔を見て、私も怯えた。母「公安だ。タカシ、カーちゃんが捕まったら助けるんだよ!」。私は声にならない声で「うん」とうなずく。

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